「君のクイズ」小川 哲著 (朝日新聞出版、2022)


 ミステリーだがクライム小説ではない。テレビ業界を舞台にクイズ王がアイドル化したバラエティ番組の
事件(?)。主人公は問題が一文字も読まれないうちに正解するライバルの姿を目の当たりにする。しかし
どなたの頭にもよぎるであろうヤラセではないかという疑い。同じテレビ出演者である主人公の自己否定にも
なりかねないから、主人公はそれは却下したい。真実の追求が始まる。一見すると荒唐無稽な設定だが、
この謎解きの快感度は高い。
【以下ネタバレ注意】名前だけ登場する番組ディレクター、セリフもなく性格の描写もないが、極めて重要な
役柄である。このディレクターも普通に善人であろう。視聴率、視聴者へのウケ、生放送を失敗させたくない
という切迫感、クイズ回答者の魔術性の担保、いろいろなしがらみの中で真摯にクイズ問題作成に向き合う。
一方、クイズ王とは、どういう境地に達した者なのか。どんなトレーニングを積んできたのか、どこに注力
するのか。単に「物知り」であることはクイズ王を保証しない。ディレクター(出題選定者)の心理と行動を
読むことが重要なのだ。道を極めれば「一文字押し正答」も可能になる。百人一首の競技かるたに「むすめ
ふさほせ」という覚え方があって、よく似ている。その延長線上には、「ゼロ文字押し」も。。。(以下自粛
以前小欄で書いたことにも通ずるようなので、再録:「予備校の先生はこう言い放った。国語で得点したければ、
『文章とは戦うな、出題者と戦え』。設問を真に受けるな。出題者がその解答欄に期待していることを書け。」
私はそういう観点からこの小説の醍醐味を総括しました。



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