10 分間テストと宿題
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ある光学的に純粋な化合物の比旋光度は +10.0° であった。
手元にある試料は光学的にやや不純で、同一条件で +5.0° と
測定された。(+) と (-) のモル比は?
答え 3:1。ラセミ成分は光学不活性であることを考えよ。
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ヨウ化水素が塩化ビニルに付加すると 1-クロロ-1-ヨードエタン
を生成する。付加速度はエチレンの付加に比べて遅い。
a) 中間体の構造式を書け。
b) 反応性を制御しているのは、I 効果か R 効果か?
c) 配向性を制御しているのは、I 効果か R 効果か?
答え
b) 反応が遅いのは二重結合の電子密度が低下したためであるから、
誘起(I)効果のためである。
c) 塩素に結合しているカチオン中心が電気陰性原子である Cl から
不安定化されるか、Cl の非共有電子対の流れ込みで安定化されているか
どうかである。予想することは困難であるけれども、実験結果は後者の
寄与が勝っていることを示している。ゆえに共鳴(R)効果が支配的。
この問題は、クロロベンゼンの配向性と関連付けて考えてほしい。
11/9
1)塩化ネオペンチルの求核置換反応は大変遅い。なぜか。
2)エタノール中で反応させると、ゆっくりとであるが、
2-エトキシ-2-メチルブタンと2-メチル-2-ブテンを生成する。
反応機構を説明せよ。
ヒント:転移生成物ができたということは、中間体?
答え
一級であるからカルボカチオンはできにくい。SN1 は遅い。
また、背後にかさだかいアルキル基を持っているので、SN2 の
背面攻撃もできない(一級でも SN2 できないことがあることに注意)。
2-エトキシ-2-メチルブタンと2-メチル-2-ブテンの生成は中間体
カルボカチオンの生成を示す。おそいながらも SN1 機構と考えられる。
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次の主生成物はなにか。(図略)
答え
Williamson 合成は、典型的な SN2 反応である。
β位(隣の炭素上の意)に水素があると、脱ハロゲン化水素を
起こす E2 反応と競合する。1)ではイソブチレンしか得られない。
2)は正しく t-ブチルメチルエーテルを与える。
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プロピルベンゼンを合成したい。
ベンゼンと 1-クロロプロパンと塩化アルミニウムを用いた反応では、
副生成物が多くて、あまり優れた方法ではない。可能性のある副生成物
を挙げよ。
答え
1)1級のカルボカチオンはしばしば2級に転移する(ヒドリド転移)。
問題の場合、プロピルカチオンがイソプロピルカチオン( (CH3)2CH+ )
になりやすいため、イソプロピルベンゼン(クメン)ができる。
2)アルキル基は電子供与性があり、ベンゼンの求電子置換反応を
活性化する。すなわち、仮に1モルの試薬を用いた場合においても、
ポリアルキル化を防ぐことができない。
この2点を防ぐ方法は、Friedel-Crafts アシル化反応つづいて、
カルボニル基の還元、である。
12/21
次の反応の選択性の理由をいえ。
答え
1)NaBH4 は、ケトンを還元できるが、エステルを還元できない。
エステルは隣接酸素原子から共鳴効果による電子の流れ込みのために
カルボニル基の求電子性が弱められており、それに基づく反応性は
ことごとく悪くなっている。この還元反応は、ヒドリド H- のカルボニル炭素
への求核攻撃によって起こる。
2)立体障害により、おなじケトンでも、すいた側で優先して反応する。
立体効果は、速度論的効果で説明される。かさ高い置換基が試薬と反応遷移
状態で van der Waals 反発を引き起こす。それは活性化エネルギーの山を
反発のエネルギーだけ押し上げるので、その遷移状態を通過する反応の反応
速度は著しく低下する。
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ケトンとアルデヒドでは、一般に求核試薬との反応性がアルデヒドの方が高い。
なぜか(置換基効果2つ)。
答え
立体効果。水素原子は小さいので、試薬の攻撃に対するポテンシャル障壁が低い。
電子効果。アルキル基は電子供与基である。カルボニル炭素の求電子性を弱める。
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無水酢酸(CH3CO-O-COCH3)と2モルのアンモニアを反応させても
アセトアミドは2モル得られず、1モルだけである。反応機構を書いて
説明せよ。
答え
一方の CH3CO 基はアンモニアの求核攻撃を受ける。このとき他方の CH3CO 基は
脱離基の酢酸アニオン CH3COO- として働くだけである。酢酸アニオンのカルボニル基
はもはや求電子性はない(O- が強い電子供与基と考えるとよい)。酢酸アニオンは
反応機構上は電荷中性の酢酸(CH3COOH)になるが、アンモニアは酢酸のカルボニル
を攻撃するよりはやく中和反応を起こして、塩 CH3COO- NH4+ となってしまう。
アンモニアが四級化されるので、こちらの求核試薬としての反応性も失う。