C60の Huckel 法
幾人かの学生が永年方程式の作成に挑戦して下さいました。
黒川君、末吉君、清水君、小林君、森(文)君、正解でした。
Huckel 計算出力例をここに示します。
advanced な考察のために:
1)C60はスーパーアトムと呼ばれる。
縮重の様子をヒントに、その理由を考えてみよう。
最も下の軌道の AO の符号を見ると、s状態であって、これは一重。
次の軌道は三重縮重(p状態)、その次の軌道は五重縮重。
しかしこの規則的な 2k+1重縮重は次第に分裂し始める。
球対称より対称性の悪い"Ih" 点群であるために縮重を保ち得ないから。
なお、HOMO には五重、LUMO には三重の縮重が残っている。
十一重縮重が分裂した名残りである(LUMO の一つ上は三重縮重で、併せて11)。
もっと高級な計算結果は、ここ。
2)C60の”ベンゼン環”は、結合交替を起こすかどうか。
隣接CC間の結合次数は、1.60 と 1.48 である。
”ベンゼン環”に当てはめると、結合次数が大小大小大小となり、
1,3,5-cyclohexatriene 構造である。なお、結合長は結合次数が
大きいときには短い、と考えて良い。X線などの実験事実とよく合う!
これは、極限構造式に対応しているところがおもしろい(アズレンで見たように)。
計算によれば、12500個のケクレ構造のうち、六員環-六員環接合部と
五員環-六員環接合部に二重結合が書けるものはそれぞれ、5500個と
3500個あるという。したがって前者の方が二重結合性が高い。
実測の結合長などは、ここ。
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