「虫の味」篠永哲、林晃史著 (1996)。
ファーブルによればフランスの片田舎では蝉を食するという。食虫はタブーか、グルメか?
私もかつてオーストラリアを訪ねし折り、アボリジニー料理のイモムシを賞味したことがある。
川崎市多摩区のスーパーではイナゴの佃煮がいまでも手に入る。これらの食用可能性については
もちろん心配無用である。しかし経験のない虫となると。。。
この本では、著者らがまじめに楽しくかつ安全に、カブトムシ、カマキリ、ミノムシ、ムカデ等々の
虫料理を開発し試食していく。モノクロながら写真も添えられており、皿に盛り付けてクレソン
が付け合わされている様子が、いかにも美味そうだ。ゴキブリの刺身に果敢に挑戦するあたり、
電車で読んでいて不覚にも笑ってしまった。理系作文の冷静な筆致が、倒錯した内容を際立たせて
いる。これは奇書である。硬いサナギはだいたい美味しいらしい。から揚げのときにはぜると
いけないので小さな孔をあけること。どうぞお試しあれ。
理科系は好奇心が必要だといわれる。しかしいい研究者になるにはそれでは足りない。『異常な
までの』好奇心が必要である。そんな言葉をふと思い出した。著者は医学薬学の先生であり専門は
漢薬、昆虫学、感染症だそうだ。「虫の味」はあくまでも著者たちが仕事熱心であるゆえの行動と
その成果である。倒錯と言ったら叱られる。虫料理はメタファーとして見習うべき点がある。
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