「しあわせの書 迷探偵ヨギガンジーの心霊術」泡坂妻夫著(1987)


古本屋で買った推理小説を読んでいて、途中で「こんなことを言っているけど騙されるな、
真犯人はこいつだ」などという鉛筆書きを見つけたりする。こんなけしからん悪戯は止めよう。
ミステリー本は読者を欺くのが真髄だとすれば、本書はその一流と言ってよいだろう。
この書評は書きようがない。仕方ないから少し駄文を書く。
アナグラムanagramというのがある。例えば、ロリンズは”airegin”(ナイジェリアの逆綴)を、
エバンスは”Re:person I knew”(マネージャーのオリン・キープニュースから)を残した。
西洋では伝統のある綴字遊びであり、身近な本ではハリポタ第二巻にもその実例を見ることが
できる。一方、アナグラムは我国ではあまりポピュラーでないから、和訳本では面白さは半減する。
ところが最近子供に読ませた『デルトラクエスト』の訳者のセンスには唸ってしまった。
この本は随所にパズル、駄洒落、アナグラムなどが散りばめられて、読者もアドベンチャーを
楽しみながら読み進めることができる。子供向きの本ではもとの英文が透けて見えるような拙い
和訳ではいけない。この本には透けて見えるところがほとんどない。恐るべし児童文学。
『しあわせの書』の秘密はアナグラムなのか?いやいや、こんなmisleading にひっかかる
ような皆さんではありませんよね。


補遺
アナグラムが関係するのは泡坂妻夫氏の名前であることはかなり良く知られている。



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