「山師カリオストロの大冒険」種村季弘著(1978)


Cagliostro 伯爵と聞いて何を思い起こすか。宮崎アニメだろうか、アルセーヌ=リュパンだろうか。
この男、ヨーロッパを股に駆けた実在のペテン師であった。この本は限りなく史料に忠実に著わさ
れたカリオストロ伝である。
フランス革命前夜のどさくさに暗躍したこの怪人は、ロシア革命におけるラスプーチンにも似て
いるが、カリオストロは当時の自称化学者かつ医者であり、宗教家ではない点が異なる。にも
かかわらず大衆に支持されたのは、当時の錬金術が、宗教魔術程度の位置づけに過ぎなかった
ことを物語る。
彼がバスティーユ監獄から娑婆に出るときに、一万のフランス国民に熱狂をもって迎えられたという。
一方、真っ当な化学者であり近代化学の父といわれるラボアジェが、断頭台の露に消えたということ
も史実としては有名だ。この待遇の違いは、ラボアジェが高級官僚でもあったという点に帰す意見
もあるが、カリオストロとて社交界の寵児で(自称)貴族なのだから、体制側の一員という見方が
できる。一介の、元国家公務員で(自称)真っ当な化学者たる私はそんな時代に生まれなくて
よかったとつくづく思う。贋金を作り、美顔水を売り、美人の妻と詐欺行脚、魔術を駆使して世俗を
たぶらかす。本書をお読みになればその秘訣をゲットできる。今だって、似非美顔水は老若婦女子に
よく売れるのだから。しかし彼を真似ると獄死する破目に陥るので、ご利用は計画的に。



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