「野生の呼び声」ジャック・ロンドン著(1903)/辻井栄滋訳(2001)


 ディズニー版「南極物語」を見る機会があった。しかしリアリティ欠如のために、あまり
感動しなかった。極限の地を生き抜いた犬たちが、どうして毛並みつややかなままなのか?
疵を負ったり、耳を失ったりするのが当然だろうが、と。
 ふと「荒野の呼び声」という古い映画があったことを思い出した。でもツタヤで見つけられ
なかったので、昔に読んだ小説を読みなおしてみた。岩波文庫では「荒野の..」だったが、
今回は辻井新訳版「野生の呼び声」(原題は The call of the wild)。
 ゴールドラッシュに沸くユーコン地方(カナダ/アラスカ国境あたり)。平和な家庭の飼い犬
だった主人公のバックは、拉致られて橇犬にされる。ブリザードは吹き荒れるわ、うなる
野犬に取り囲まれるわ。。。犬相のいい奴、悪い奴、目に浮かぶ。活字のもたらすリアリティは、
映画を凌駕することを再確認した。読まれ続ける本は、さすがにいい。
 バックは他犬の指図を快しとしない。誇り高い。橇犬としてリーダーの座を奪う。ヒトとは
信頼関係で結ばれる。命を助けてもらったら、恩返しを忘れない。飼う飼われるの関係を
超越している。飼われ犬におさまっているようなちっぽけな輩ではない。当然の帰結として。。。
硬派動物文学。ハードボイルド小説好きにお勧め。気に入ったら同著「白い牙」もどうぞ。
 あなたは犬派ですか、猫派ですか。だんぜん犬がいい!バックのような犬に会いたい。




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