番外編
CD/SACD評「Last Live at DUG」Grace Mahya (p, vo)(2007)
Grace Mahya のリーダーアルバムはこれが2枚目なのだそうだが、この新人はタダ者
ではない。#1 Route 66 や #5 Mona Lisa から想像して、Cole のような演奏を期待
したら見事に裏切られた。しかしそれは嬉しい裏切りなのである。#6 Comin Home Baby
はかつてflで演られて一世風靡したブルース曲である。これを女性pがどう料理するのかが
楽しみであった。果たしてそれは期待以上の演奏であった。もの凄くファンキーなのだ。
サイドメンも安心してソロをまかせられるツワモノである。辛口のリスナーならoverfunkと
言うかもしれん? なーに、楽しければいいのさ。
有名曲ばかりであるし、プレーヤの寄せ集め安易セッションと見えないこともない。が、
一曲目からの聴衆の熱狂はその心配を払拭するのに十分だ。活きのいい若手のジャズを
聴きたい方に、J-Jazz の女性プレーヤに弱い貴兄に、finger-poppin 系p愛好者に、
key(org)やgが入ってなきゃ駄目というコテコテ派にも、これはお勧めである。
2007期Gold Disc に自分勝手に選定します。私は広告料を取らないので選定はフェアです。
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中身に興味ある方のために、内容をちょっと紹介:
#1「66」では、日野tpが貫禄たっぷりである。たった一曲の参加なのにアルバム全体を締めて
いる。オーラを持つ男だ。pは彼に敬意を表しながらソロを開始するも直ちに自分のスタイルで。
#2「素敵なあなた」非凡なヴォーカリストである。歌詞が板についている。
#4「Kiss of Life」Sade のけだるい雰囲気をうまく踏襲している。ミディアムスローな曲では
彼女の持ち味が発揮できないように思われるが、そうでもない。実際これはいい。小沼gがいい。
#6「Comin Home」ソロのトップは河野keyで小気味よい演奏。小沼gへバトンを渡し、pへと続く、
この3者のグルーヴ感は日本人離れしている。音が若いのに全体の完成度が感じられるのは、
各ソロイストの力量の一致のためであろう。最後のテーマ合奏でvo のスキャットあり唸り声
ありで、楽しい。このアルバム中の白眉の出来栄えと感じた。
#9「Sunny」古いポピュラーチューンであるが、これも大変ファンキーだ。信頼が厚いと見えて
河野keyがソロを開始して、これが奏功しているのは#6と同様である。asソロと、リラックスした
pソロのあと、el-bがチョッパーで盛り上げてdsへ繋ぐ。アルバムの構成としてもこのリズム
セクションのソロはいいアクセントとなる。Mahya の発声はややフラット気味で、この種の
歌モノで威力を発揮する。発声もいいが、発音はさらにいい。
#10「追憶」as の泣き節はなかなか聞かせる。voはご愛嬌ということで。
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追記(8月7日)
「Cotton Club」良かったね。惚れ直した。"Caravan","Recardo Bossanova","Summertime"
ジャズ曲はいいグルーヴ感出ていた。"Dindi","A Case of You","Rose"もしっとり歌っていた。
歌物は悪いわけではないし、ポルトガル語の発音は確かに良いのかもしれない。しかし音楽の
楽しみは必ずしも発音ではない(ポルトガル語わからないし)。聴衆は Mahya の音楽感性、
創造力を見たいのだから。Mahyaにはもっとジャズをやって欲しいと思うのは俺だけではないはず。
荻原亮(g)はなかなかいいフィーリングを持つ若手とみた。
追記(8月21日)
情報によると、mahya と荻原氏は御夫妻なんだそうだ。どうりで chemistry が合うわけだ。
そういえば目配せにも親密さが出ていた気がする。
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