「どうしたらチェスで君のパパに勝てるか」マレイ・チャンドラー著、浜田寛訳(2009)
本国のチェスプレイヤーにとって今年は良いニュースと悪いニュースがあった。
今年はチェス本界にとって出版ラッシュの年であった。小笠誠一氏(sunking)は 「チェス
戦略大全」全3巻(Ludec Pachman著)を翻訳し、本年に第二巻が刊行された。水野優氏は
多くのチェス本の翻訳に尽力し web 公開もされていて、彼の訳著「チェス終盤の基礎知識」
(Yuri Averbakh著)が、今年出版された。初心者向けにも、東やフィッシャーの「チェス入門」
が約35年の沈黙を経て復刊され、「チェスマスターブックス」も順次復刊されるという。
ところが、ヤフージャパンのチェスサイトが、今年10月をもってファンの反対を押し切って
閉鎖された。私を含めて多くのユーザーが憤っている。競技人口増加のまたとないチャンス
だったのに、全くチグハグなことである。
標記の本は昨年の発刊である(姉妹編「敵をあざむく50の戦術」は今年邦訳版が出た)。
人間の脳は盤面評価をいかにして行うか。著者はメイト方法を50種に類型化し読者を
パターン認識へ導く。図面が多いので読者は脳裏に焼付けやすい。詰み筋のレパートリー
が多ければ中盤に強くなる。この本は児童書の体裁をとっているが、大人も十分楽しめる。
まず1番が Anastasia メイトである。back-rank メイトは40番にある。この順番を見る
だけで、前提に要求される水準がわかる。メイト列をこじ開ける Anastasia、Greco、Morphy、
メイト対角線をこじ開ける Boden、Blackburne など、中級者なら頭の中で整理されている
方も多いだろう。私もかつては"The art of the checkmate"(Renaud & Kahn,1953) で研究した
のだが、当時のGreco チェックは、今はTaimanovチェックと呼ばれるらしい。本書は欧米でも
かなり売れたと聞く。それはおそらく各パターンに与えたネーミングが上手かったことも
一因とみられる。題目を付けると(人名メイトとか)記憶しやすくなる。WRサクとかWBサクとか
半窒息とかf5N戦略とか、彼のキャッチーな命名はわかりやすく親しみやすい。
有機合成にも人名反応がある。鈴木カップリングとか、根岸カップリングとか。その
組み合わせで合成経路の構築が楽になる。同じだね。さあ皆さん、指南書は花盛りです、
チェスを始めてみませんか(でも試合サイトが減った。。。)
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