もし研究室の先生が岩崎夏海の「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』
を読んだら」を読んだら
この本は、一見青春小説の姿を借りつつ、若手ビジネスマンに経営学を啓発する書としてかなり
売れているという。随所にネタ本『マネジメント』からの引用が登場する。小説としてみた場合、
強引な展開や、人格の豹変にリアリティを欠くところで減点もあるが、最後は涙腺の緩んだ中年
読者をホロリとさせるのに成功しているので、一応、合格点とする。
大学の運営においてマネジメントをどう適用するか。事業を定義すること、マーケティングする
こと、専門家(教員)と管理者の関係を定めること。大学教員は世間知らずであり、学者出身の
執行部もまた同様であり、経営の素養は、適当な時期に教員へ教育する必要がある。
研究室運営の場面でも、経営学は意味がある。これをあからさまに書くと卒研配属希望が減る
ことを危惧するが、経営手段は「いかにして人を働かせるか」に尽きる。私はロボットじゃない、
研究室は教室であり会社じゃない、と言うかもしれない。しかし、大学組織の事業を定義すれば
「いかにして働ける人を育てるか」である。まず働かされ方を教え、次に自ら働くことを教え、
いずれ人の動かせ方を教えることは、大学の正しい業務といえる。業務の定義が経営の第一歩だ。
マネジメントにおいて重要なことは「責任を持つ仕事を任せ」、「成果を正当に評価し」、各人が
「自己目標管理をする」こと。これは教育現場でも同意見である。さらに、理系で最も重要な資質は
「真摯」であることと普段から言っているが、これを理系限定に考えたのは誤解だった。マネジャー
に不可欠な資質も「真摯」だという。要するにこれは何方にも必要な資質なのだ(当たり前ですね)。
それから、いい言葉を覚えた:「人は優れているほど多くの失敗をする」。実験室で使っていこう。
この本を通して、『マネジメント』が経営学の教科書のみならず人生読本でもあることが見えてくる。
ピーター・F・ドラッカーという人、「365の金言」という本なんかも出してる。どうりで。
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