「謎解きはディナーの後で」 東川篤哉著(2010)


 ネタバレしない程度に書きます。「謎解き」は、コミカルな面が強調された宣伝文句や帯から予想
されるよりも遥かに本格的であった。由緒ある推理小説の展開だったら、「さてここで読者への挑戦状
である。真犯人は解ったかな?」という章が出てくるところである。この本では、頼りないお嬢様デカ
が執事に相談するところがそのタイミングである。読み進めると「お嬢様の目は節穴ですか」とガツンと
やられる。本作品は短編連作集なので、毎度このパターンに出会う。そしてこのマンネリは、イヨッ待って
ました水戸黄門!とばかりに、日本人の琴線に触れるのだ。
 この執事はSキャラなのだと思う。主人公お嬢様は読者の影法師であって「読者にも解らないのですか、
あなたの目も節穴ですか」と言われているのと同然である。だからこの対話が愉快に感じるなら、読者は
Mである。確かに俺の目は節穴だよ悪かったね。でも俺もちょいMだからニヤリとする。
 ミステリーコメディという分野が確立しているかどうかは知らない。本書の男女の軽妙な会話は「TRICK」
のそれと似ている。いやずっと上品である。変死体を前にして、やれセクハラだの、昨晩のナイターだのと
いう会話は不謹慎に感じられるが、それは意図的に尊厳を排除してクイズバラエティのような雰囲気を醸し
出そうとしているためだろう。人命軽視を助長しないかというのが杞憂であればいいのだが。





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