「チェスをする女」ベルティーナ・ヘンリヒス著、中井珠子訳(2011)


 ギリシャの片田舎が舞台である。ある主婦がチェスに開眼して、旦那と近所の目を気にしつつ
手ほどきを受けに出かける。旦那との関係がギクシャクする。書き置きを残してトーナメントに
出場する。旦那は激昂する。これを原作にして映画化され("Joueuse" 英題 Queen to Play (2009)、
日本未公開)、一定の評価を得ているという事実からすると、現代のヨーロッパでも女性の
社会進出に対する理解の乏しい地域があるようだ。
 海外には、議員の半分が女性、首相も女性という国もあり、しかし、日本でそうならないのは、
女は男の三歩後ろを歩けというような伝統のためであろう。男性と女性で能力が同等であれば
女性の方を登用せねばならない、という法律を持つ国は多い。人種マイノリティ保護という観点で
多民族国家においてはさらに重要な意味を持つ。そこでは「法の下の平等」が再定義されている。
これまでの歴史に照らして、平等を達成するためには、多少のovershootを積極的に認めて
法制化する。我が国ではそのようなaffirmative actionという考え方が成熟していない。
 名工大工学部機械工学科では女子特別推薦を継続的に実施している(H24も)。本学でも
これに近い制度の導入を検討したことがあるが、逆差別にあたるだろうという保守論が根強かった。
平成23年度の女子入学割合は残念ながら8%台に留まっている。UECウーマンという名の
経済支援は施策として十分だろうか。本学は産業界へリケジョを率先する勇気があるのか。
理工系大学界のオピニオンリーダーたる地位を望まないか。そう望むなら、本気を見せてみろ。



  • ブラウザの「戻る」で戻ってください。