「弱くても勝てます」高橋秀実著(2012)
我が母校のルポだから贔屓目に見ているというところを割引いて、客観的に読んでも面白かった。
テレビ化に際して、校名を明らかにしない条件で取材があったらしい。本の方は実名報道ですけど。
若者の、少しひねた、ひねくれた心理を強調しすぎではあるが、題材は愛すべき高校球児だから、
さわやかな読後感が残る(と言っておこう)。05年度のベスト16騒ぎのときには、OBのメーリング
リストを利用して実況中継もされた当時の興奮を反芻しつつ、その舞台裏に迫ることができた。
高校野球エリート校と開成を比べて、はたしてどちらが正しい高校球児を育てているのかを考える。
選手集めと施設整備に巨額の予算を投下し、甲子園の名を借りてNHKに学校の宣伝の肩代わりを
させ、その代償に犠打多用の甲子園型野球を演じさせる学校がある。しかし一方で、限られた環境の
中で工夫して練習し、サインプレイは無く、超攻撃型野球を掲げるチームがある。水準こそ違うが、
蔦監督の率いた池田高校と相似している。見て楽しいゲームというのは、おそらくプレーヤーも
楽しんでいるであろうことが前提である。私なら後者を選ぶ。贔屓目に見ているかな。
さて、全国からポスドクをかき集めて研究エリート集団と化して巨額の資金を運用する研究室が
あったとする。一方においては、限られた環境の中で研究し、自主性を重んじる雑草集団がいる。
どちらが技術者、研究者を育てる正しい道だろうか。などと、また余計なことを考えてしまった。
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