♪ CD 評 ♪
「Wallflower」(コンプリートセッション版) Diana Krall (2015)


最近、真空管プリメインアンプ(パワー段にEL34またはKT88/6550)を導入したので、色々と試して
聞いている。歌物はオーディオチェックに具合がよく、試すなら色っぽいのがいいということで。
「Wallflower」 の選曲は、80'sの洋楽で育った世代であればど真中ストライク。同じ世代の連帯感。
California Dreamin', Desperado, Superstar, Alone Again, I Can't Tell You Why, I'm Not in Love,
Feels Like Home, Don't Dream It's Over, Everybody's Talkin', Heart of Gold, ... ね、食指が動くでしょ。
クラールはここでは男の歌をそのまま歌う(歌詞中her をhim に変えないのは元々の曲想にも因るが)。
低い声域と相まって中性的である。歌の楽しみは主観だと断言しておく。あのビジュアルとハスキー
ボイスは、天が二物を与えた結果だ。先の来日時に聴く機会があり、彼女は「風邪気味で声が
かすれて」と詫びていたが、かえってその声が私を萌えさせてくれたことは、勿論言うまでもない。
#5 Wallflower は他のヒットチューンと比べて、ん?と思うが、聴いてみると、確かに表題に選ばれてよい。
彼女をもっと知りたい方は、DVD「Live in Rio」(2009)も是非ご覧ください(YouTubeに上がっている)。
ボサノバの本場に来て、イパネマの娘(The 'Boy' from Ipanema)を歌う。観客が合唱する。クラールは
歌い終わって、投げキスと感極まった声で感謝。これで撃ち堕とされてしまう諸兄も多いに違いない。

 Jazz Japan 誌最新号(Jun. 2017)で、クラールの新譜「Turn Up the Quiet」の紹介と、それが遺作と
なったTommy LiPumaの追悼記事を読んだ。リピューマはクラールを出世させた名プロデューサーで、Natalie
Cole の「Unforgettable」(1991)も代表作の一つ(David Foster がコプロ)。クラールの前作「Wallflower」は
フォスターのプロデュースでAORコンテンポラリー志向、新作「Turn Up the Quiet」はリピューマの
プロデュースでジャズ志向(L-O-V-E などを含むスタンダード回帰)である。まるで振り子のよう。
女は男によってこうも変わるのか、と勝手に合点がいっています。因みにクラールの旦那はElvis Costelloです。



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