「白洲次郎 占領を背負った男」北 康利著(講談社文庫、2008)
中学高校の「日本史」では、近現代史に触れることはなぜかタブーである。吉田茂、東久邇宮、近衛文麿らの
人物像を明らかにするこうした本は実に面白く、現代社会を理解するためにも必読である。吉田は日本が独立を
回復したときの名宰相として誉高いが、舞台裏で、終戦連絡事務局に腹心の白洲次郎を置き、彼らが日本の為に
どう交渉を重ね、いかに奮闘したのか。白洲はマッカーサーを叱りつけた唯一の日本人として伝説化した人物。
マッカーサー布告(1.日本の三権を最高司令官に置く、2.公用語を英語とする、3.司令官命令の違反者は
軍事裁判にかける、4.通貨を米軍軍票とする)をまず阻止せねばならない。吉田曰く「敗戦したからといって
奴隷になったわけではない」。一方でGHQ主導の公職追放や巣鴨収監によって仲間を次々と失っていくことに
打つ手がない。サンフランシスコ講和条約の調印後、吉田はGHQの検閲を受けた英語のスピーチを用意して
いた。それに気づいた白洲は、英文原稿を捨てさせて、和紙と毛筆で日本語の演説原稿巻物を書き上げる。
さらにこの本は、日本国憲法の伝記でもある。日本側原案は退けられ、GHQ案が提示され、それをあたかも
日本発案であるかのように発表し、マッカーサーが即承認するという出来レース。白洲は「今に見ていろ」と
外務省で人知れず涙する(外務省記録)。この頃の日本に白洲がいてくれたことは本当に幸運だったと思う。
日米安保条約の秘話も興味深い。日本の主権を早期に確保するための重要な取引材料でもあった。だから
吉田は講和条約発効後に安保条約は破棄してもよいと考えていたらしい。憲法や安保条約を金科玉条として守り
続けるのは根拠薄弱であろう(憲法9条「だけ」を改正するというのも同様に未熟であろう)。
白洲に興味を持たれたら『プリンシプルのない日本』(白洲次郎、新潮文庫、2006)を。怒り続けてます。
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