「終わった人」内館牧子著(講談社、2015)


 東北大金研には何年か共同研究で通っていた。新幹線で暇つぶしに車内広報誌を読むと、東北出身である内舘の
エッセイがよく載っていた(マスコミで見せる顔はどちらかというと作家というより相撲通で有名だった)。
本作も東北愛に満ちていて、主人公が盛岡出身という設定である。
 主人公は63歳で定年退職。実は私も今年度63歳を迎える。てなわけで、最近こういう本で感情移入する。
ヒマを持て余す夫に、妻も娘も「恋でもしてみたら」とけしかける。幸せそうな家庭にありがちなユーモアか。
(夫)「お前さ、俺が本格的に恋に走ったらどうする」
(妻)「見直す」
ここは個人的には爆笑ポイントだった。ありえないと見切られ、不憫がられ、掌の上で転がされて。。。二人の
力関係はこの一言に凝縮している。内館はこのセリフを言わせたいがためにこの小説を書いたのかもしれない。
【以下ネタバレ注意】コメディーで開始するけども、読み進めるとだんだんシリアスになり、終いは悲劇的だ。
退職後に人生波乱万丈になるのは魅力的だ。しかし、この話は小説の中に留めて欲しいと思うほどのリアリティが
ある。我々世代の読者の中には、このような結末を恐れて、第二の人生の博打を見合わせた方もいたであろう。
 ところで、妻の心情が掴みにくい一方で、娘は実に小気味良い。女流作家に易々と書けるセリフではない:
(娘)「ママは妻になれる器じゃない」
妻の器とは何か。かかあ殿下には是非考えてもらいたい。ラストシーンは映画(同名、2018、東映)の方が
出来がよかった。愛情ある妻でよかった。最後に助けられた気がする。助けられた?感情移入し過ぎました。



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