「プロジェクト ヘイル メアリー」アンディ・ウィアー著 小野田和子訳 (ハヤカワ文庫SF, 2021,2026)
「プロジェクト ヘイル メアリー」フィル・ロード&クリス・ミラー監督 (Amazon MGM, 2026)


 久しぶりに読み応えあるSFを読んだ。映画も公開されたのでご覧になった方も多いだろう。楽しいハッピーエンド物。
地球規模・全宇宙規模のディザスターの回避および地球外知的生命体との遭遇が表のテーマだが、男同士の友情物語が
裏テーマにあり、心に沁みる。その種の小説・映画にはだいたいハズレがない(仮にロッキーは男とした)。
 読後に分析してみたらSFの王道がてんこ盛り。amaze, amaze, amaze! 地球破滅のカウントダウンが進行し策を
求めて出航(宇宙戦艦ヤマト的)。クジラ座τ星衛星に何かあるぞと(スタートレック的)ミッションに出るも乗員は
主人公以外全滅で一人ぼっち(2001年宇宙の旅的、パッセンジャー的)。キモカワ異星人が登場して(E.T.的)、
相手の言語の理解に努め(メッセージ的)、音階で対話する(未知との遭遇的)。解決策は微生物が鍵を握る(宇宙
戦争的)。学校の先生が活躍する(SFじゃないけど breaking bad 的)。これで売れないわけがない, question?
 地球人科学者が異星人工学者と出会い、エイドリアン星(笑)周辺で共同研究する。これが友好的に展開したのは、
彼らが研究者であったためである。理性的知性的解決を図る。自分の技術を無欲に差し出し、相手の技術に敬意を払う。
腕っ節は強くないから喧嘩を好まない。そういう者同士なら、紛争も戦争も起こらない。小さい地球は文系が牛耳って
いるから、戦争が絶えないのだよ。そんな社会批判的読み方もできる(のは、関連職種にいるひねくれ者だけかも)。
 主人公は大変人間味がある。特攻ミッションを嫌がるくだりは喜劇である。臆病で落伍者だと自認して、決して
スーパーマンではない。そこが共感の得やすいところであろう。映画では、ボスの歌に心震わすところや(劇中歌
sign of the times が凄く良い)、ロッキーにハグを教えるところは、人情劇としても素晴らしい。エンド
ロールで流れる Tina Turner の Glory Glory も内容に合っていてこれもいい。ゴズリングは本作のプロデュース
兼務とのことで、のびのび、爽やか。次期スターウォーズシリーズの主役とも聞いた。期待したい。



  • ブラウザの「戻る」で戻ってください。